授業をつくるTV

このブログでは,youtube「授業をつくるTV」と連動して,子どもと教師,子ども同士のやり取りから,授業の姿やそれを作り出す教師の思いを考えていきます。

AI(人工知能)によって変わる教育...今,僕たちは何ができるのか…

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Human Phone

話題の小説として紹介されていた「R帝国」。

読んでみて,はっとさせられた部分がありました。

未来を描いた物語の中で,人々のツールとして描かれていたのは,「HP」という携帯電話。AIを搭載した携帯電話です。(HP=Human Phone)

 

R帝国

R帝国

 

 

私と同じ世代の方は,昔「ナイトライダー」というドラマを見たことがあるのではないでしょうか。主人公とAIを搭載した喋る車が協力しながら事件を解決する海外のドラマです。主人公と冗談を言い合う姿に「こんな車があったらいいな」と憧れたのを覚えています。

 

「R帝国」では、その相棒が携帯電話になります。普通の会話や相談,体調管理,メールの返信,一番効率よく目的地に着く方法,リアルタイムのニュースなども,HPと呼ばれるAIが会話しながら教えてくれます。(HPから話しかけてくることもあります。)まさしく一番分かり合える人生の相棒が携帯電話の中にいるといった感じです。

 

この本を読んで,「HP」と呼ばれる携帯電話と全く同じものが近い将来できるのではと思わされました。

AIは着実に進化していると聞きます。AIが私たちのアドバイザー(会話の相手)となるのは,そう遠くない未来だと思います。

携帯電話がそれぞれ個性をもち,時には親身になって,時には冗談を言いながら,様々な場面で持ち主に情報を与え,一緒に状況判断を行っていく,そのような未来が迫っているのではないかと思うのです。

 

AIの判断は人を超えて正確である…

Bigデータを基に行われるAIの判断は,人の判断力を大きく超えて正確です。人は,HPの判断力を全面的に信じて頼るでしょう。今までは,人がたくさんの情報を取捨選択し,自分の意志で判断し行動していたものが,AIの瞬時の判断で行動するようになります。人生における重要な判断も,AIに委ねる人が出てくるかもしれません。

 

問題は,AIの判断は結果のみで,なぜそうなったのかは全く示されない点です。判断の過程がブラックボックスの中にあり,なぜそのような判断をしたのか全く分からないのです。

答えだけあって,解き方が示されていない。つまり,人間がAIから判断の仕方を学ぶことはとても難しいのです。

 

AIによって教育はどのように変わるのか…

AIの登場によって教育も大きく変わっていきます。

まずは,教育の個別化,個々の能力に合わせた教育が行われていくのではないでしょうか。このようなソフトの開発も徐々に進んでいます。

www.ei-publishing.co.jp

そして,このようなAIを使った個別化の波は公教育まで届いてくるでしょう。

 

そのとき,今,私の学級で行っている,自分の能力に合わせてプリントの問題を選ぶ「ボックス」は明らかに時代遅れとなっていくでしょう。(今でも古典的なように感じますが...)AIは,個々の能力に合った教材を瞬時に選んでタブレットなどに表示してくれます。働き方改革の面からいっても,教師の準備は大幅に減ります。

jugyo-tsukurutv.hatenablog.com

 

AIによって人が失う能力とは…

しかし,AIを使うことで,著しく低下していく人間の能力があります。それは,たくさんの情報の中から,自分と向き合って(今の状況や過去の自分と照らし合わせて)よりよいものを選択する力。「判断力」です。

プリントを自ら選ぶ「ボックス」には,子どもの「判断力」が存在します。

子どもたちは,自分の苦手や弱い部分をしっかりと把握し,自分を成長させるために,どれを選べばよいか考えた上でプリントを選択します。

しかし,AIの場合,子どもはその判断をすべて人工知能に委ねてしまいます。

幼少の頃からAIを利用する機会が多くなると,自分と向き合って判断する機会が少なくなってしまいます。また,成長の過程で,HPのようなAIを手にする機会が多くなると,判断する経験が更に乏しくなってしまいます。

将来,ほとんどすべての判断を,AIに任せて育ってきた人間,または組織が生まれる可能性があります。一体,そのとき,世界はどのようになるのでしょうか。

その怖さがAIにはあると思います。

 

判断力が低下した組織で,はたして新しいものを生み出すことができるのでしょうか。新たなものを生み出すことも,AIの力に委ねていくことになるのでしょうか。きっと,多くの人間は,考える必要がなくなっていくのだと思います。

 

今,AIができる判断とは…それを教育に応用すると…

今,AIにできる判断は,多岐に渡ります。

人の表情から,その人がプラスの感情を抱いているのか,マイナスの感情を抱いているのかさえ判断できます。どんなに笑顔を作ったとしても分かってしまいます。

例えば,販売店にカメラを置き,個々の販売員の接客が,お客様にどのような感情をもたらしているのかチェックすることも可能です。販売員はAIに評価されるようになります。

 

これを教育に応用すると,昇降口,または教室にカメラを設置することで,子どもたちの感情の状態を把握することができます。マイナスの感情が続いている子ども,マイナスの感情があふれている学級,プラスの感情があふれている学級など,子どもや学級の状態を客観的に正確に知ることができます。

 

また,人が書いた文章から,心の状態を読み取ることもできます。

例えば,仕事に対して(悩みややりがいの)文章を書かせたときに,その文章から仕事をやめる確率を導き出すことができます。AIが仕事を辞めると導き出した人の文章を読んでも,どこからそう判断したのか分からない場合があります。しかし,AIが導き出した人は,確かに仕事を辞める確率が高いのです。

 

これを教育に応用すると,子どもの文章から,悩みを抱えているかどうかを読み取ることができます。担任が気づいていない「いじめ」や「自殺」の予兆を察知することが可能かもしれません。

 

これらのことが果たして教育で必要なのでしょうか。AIに人の心の状態を読み取らせることに言いようのない違和感を覚えます。しかし,それを否定する明らかな根拠も,今は思い浮かばないのです。

 

AIの登場により教師の職業はなくなるか…

AIの登場により,たくさんの職業がなくなっていくとも言われています。

では,教師の職業はどうなのでしょうか。

AIは,教師の教える技術を超えることができるのでしょうか。

AIが教師の教える技術を手にするのは,そう遠くない未来だと思います。

例えば,個々の学習の状況をAIは瞬時に把握することができます。それが100人だろうと,AIは,瞬時に見取ることができるでしょう。分かっている分かっていないだけではなく,子どもの表情から,意欲的に学習に取り組んでいるかどうかも読み取ることができます。

そして,今,その集団にどのような投げ掛けを行えば,子どもに疑問を生じさせることができるのか,好奇心を呼び起こすことができるのかも,ベテラン教師のBigデータを基にすれば,発することが可能なのではないでしょうか。個々の子どもたちの考えをつなげる対話を促す発問や,理解を深めるための問い返しも可能となるでしょう。AI自身が授業を繰り返し,子どもの反応をデータとして集めていくことで,更にAIの授業力は向上していくと思われます。時間は掛かりますが,AIは,将来,ベテラン教師の技術を取り入れることが可能だと思います。

 

AI教師が台頭した後の教師の役割とは… 

しかし,そのAI教師に対して,子どもが信頼や尊敬の念をもつかというと疑問が残ります。子どもにとって教師は,信頼や尊敬の対象でもあります。信頼や尊敬できる教師の励ましの言葉が,子どもの心を動かしていきます。学習や生活に対する意欲も,そのような教師の言葉で高まっていきます。信頼や尊敬できる人から承認されることが子どもたちには必要なのです。そう考えると,教師の存在意義は,コーチングという点に集約されていくのではないかと思います。

 

子どもがAIを信頼,尊敬する時代は来るのでしょうか。人がしゃべっているのと同じように,姿,形も人間と区別なく,ヒューマノイド(ロボット)の個性豊かなAIが誕生すれば,人にしかできないコーチングもできるようになるかもしれません。

そして,それらを子どもが素直に受け入れるような状況が生まれるかもしれません。

 

今,僕たちは何ができるのか…

AIの誕生によって教育は様変わりするでしょう。そう遠くない未来です…そのとき,「人が失う能力は何なのか」,そして「自分たちにできることは何なのか」を考えておくことが大事なのかもしれません。